Commissioned Report

インドネシアの環境上持続可能な都市交通の取り組み、国家戦略及び 日本の二国間クレジット制度(JCM)に対する提案

2014-03

インドネシアは二国間クレジット制度(JCM)署名国のひとつであり、2020年までに温室効果ガス(GHG)排出量を成り行きベース(BAU)比で26%削減(国際支援を受けた場合は41%削減)することを誓約している。目標値である26%の削減を達成するためには運輸部門における積極的な行動が必要となる。そのため日本のようなドナー国が次の点に注意することが重要となろう。(1)運輸部門事業を分析する際、26%・40%削減の目標値が達成可能か否かを確認する (2)JCMのような金融支援メカニズムが事業案の中でも有望なものに適用可能か否か。本報告書は大きく分けて4つのセクションから構成されており、その分析を進めている。

最初のセクション(前書き以降)では交通関連の事業計画にASIアプローチを使う近年の傾向を説明する。ASIアプローチでは政策担当者が次の点を施策に反映させることを推奨する。(1)街区デザインや土地利用計画を策定する際に不要な移動を回避するよう設計すること (2)利用者が最も効率的な輸送手段、つまり新しい或いは改善された公共交通手段への移行を促すこと (3)車両デザインや推進技術の改善をすること。
本報告書はASIアプローチの研究を補完するために更にマルチレベル・ガバナンスと革新的な資金調達方法についても触れる。ASI、ガバナンスそして資金調達の三つの研究テーマを組み合わせた分析フレームワークを構築し、交通計画を次の四つの基準で分析する (1)各地方の交通計画には移動の回避と低炭素型輸送手段への移行を目的とした施策が盛り込まれているか。(2)決定された施策の実施にあたり、制度の整備はなされたか。(3)資金調達・コスト試算について検討は行われたか。(4)温室効果ガスを対象とした信頼性のあるモニタリング・評価システムが存在するか。

第二セクションは次の三つの計画を上述の基準を用いながら分析している。その結果として
1. 2010-2014年のインドネシア交通省の国家戦略計画(RENSTRA)は運輸部門を分析する際、「低炭素」よりも「開発」に重点を置いている。また中央政府と州政府の交通計画の融合や外国投資に関する記載がほとんどない。同計画は低炭素技術が経済発展を促進するという最終目標の達成には必要であると示唆しているもののインドネシアの低炭素型交通への取組みへの洞察が少なく、JCMへの関わりが少ない。

2. インドネシア国気候変動ロードマップ(Indonesia Climate Change Sectoral Roadmap:ICCSR)は低炭素型交通の設計、ガバナンスそして資金調達について幾らか述べている。運輸部門における温室効果ガス排出削減活動はASIアプローチを用いて記述している。ロードマップは移行(S)と回避(A)の活動が最も二酸化炭素削減ポテンシャルがあるにも関わらず費用対効果が最も低いと断定する。また興味深いことに、海外からの投資先として二つの分野を取り上げ、技術移転を積極的に求めている。政府公用車の改良はJCMにとって特に興味深い方策の可能性がある。

3. 持続的な都市交通イニシアティブ(Sustainable Urban Transport Initiative SUTI) は上述の二つの国家計画よりは具体的に設計、ガバナンスそして資金調達について触れている。同イニシアティブは地方レベルの活動がASIアプローチのうち向上(I)そして移行(S)に分類されるものが多く、移動の必要性を回避或いは低減する活動(A)が少ない。更に資金調達計画は詳細に欠け、コスト計算を提出する州の数は少なく、資金を地方政府或いは中央以外から調達することも少ない。またプロジェクトの排出削減量ポテンシャルを定量化する努力も統一性に欠ける。六つの州において計画が策定され、実施方法の概要を策定、資金調達方法を特定、そして活動が開始されている。
これらの計画の中でSUTIが最も資金調達について具体的に触れているため、第三セクションではSUTIをJCM独自の基準に沿って分析している。101件のプロジェクトのうち、JCMの基準に該当するのは37%である。また(JCMの要件の通り)所要年数を短期のものに限った場合、この数値は更に下がり、海外からの資金調達を希望するのはこの中の一件のみであった。JCMに適用可能な行動の全てが環境にやさしい交通手段に移行(S)するものであり、その大部分は公共交通或いはパラトランジットの発展、改善に着目している。スマトラを更に詳細に見た場合、2004年の津波のあとの国際支援をきっかけとして他地域よりも積極的な取組が始まったことが見受けられる。

報告書の最終セクションでは分析で得られた知見をまとめている。限られた資金調達手段が多様なステークホルダーの関与、創造的な資金調達方法、そしてモニタリング・プロトコル等が組み込まれたバランスの取れたASIアプローチに準拠した行動ポートフォリオの構築を阻害要因となっている。JCMに適用可能な地方レベルの活動は、いずれもインドネシア政府が海外から求めている金融支援の重点対象分野に指定されていない。ここでインドネシアが取り上げる運輸部門の事業とJCMの設計のミスマッチが見受けられる。JCMに適用可能な事業は全て(持続可能な運輸手段への)移行(S)に分類されるものである。特に、JCMと地方レベルでの環境的に持続可能な交通事業(EST)をマッチングさせるためにはJCMが長期の実施期間の事業の対象とできるように設計を見直し、温室効果ガス削減ポテンシャルに関するルールを修正、そして技術支援の際にはASI、マルチレベル・ガバナンスと革新的な資金調達の概念を全て包含する支援パッケージをつくらなければいけない。

付表にはバンドン市及びパレンバン市の高速バス高速輸送プロジェクト(BRT)のガバナンスおよび資金調達における事例研究を紹介している。ここでパレンバン市のプロジェクトはバンドン市と比べ成功した要因として州政府の公社によるBRT運営を取り上げている。同公社はパレンバン市のBRTを支援、拡大するために融資を利用している。他方、バンドン市は市政府予算を充てたためパレンバン市ほど成功していない。

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