Working Paper
カーボン・バジェット・アプローチに基づく日本の中長期的な温室効果ガス排出経路
Topics: Region/Country: Language:
Japanese

カーボン・バジェット・アプローチに基づく日本の中長期的な温室効果ガス排出経路

Author: 
明日香 壽川
Hanna
FEKETE
Niklas
HÖHNE
2014-10

 本研究は、産業革命前からの地球温暖化を一定のレベルに抑制するための累積温室効果ガス(GHG)排出許容量である世界全体のカーボン・バジェットと、GHG排出削減努力の各国分担において広く参照される公平性基準に基づいた努力分担方法を用いて、日本に「公平」に割り当てられるカーボン・バジェットを算出した。同時に、日本について算出されたカーボン・バジェット内に排出量を抑えるための2100年までの例示的なGHG排出経路も明らかにし、本研究でのレファレンス・シナリオである日本の現行の中長期温暖化対策数値目標の下での累積GHG排出量およびGHG排出経路(Nationally Committed Amount:NCA)と比較した。

 その結果、努力分担方法として、1)一人当たり排出量の収斂(CPE)、2)共通だが差異化された収斂(CDC)、3)温室効果発展権利(GDRs)の3つを用い、産業革命以降の全球平均気温上昇を2℃以下に抑制する(2℃目標)ために必要な1990~2100年の世界全体のカーボン・バジェットを1800Gt-CO2e(土地利用・土地利用変化・林業を除く)と設定した場合、CPEおよびCDCの下では、同時期に日本に割り当てられるカーボン・バジェットはそれぞれ51Gt-CO2eおよび54Gt-CO2eと算出された(図参照)。この量は、NCAに基づく2100年までの累積GHG排出量の50~60%程度である。また、日本は2013年までに約31Gt-CO2のGHGを排出しており、仮に日本が現在のGHG排出レベルを維持するとした場合、CPEおよびCDCで割り当てられるカーボン・バジェットを2030年代初めには使い切ってしまうことになる。一方、GDRsの場合、1990~2100年の日本のカーボン・バジェットは、日本が持つ「責任」と「能力」の大きさのためマイナス値となる。

 2℃目標達成に十分かつ「公平」な日本のGHG排出量は、CPEおよびCDCで2014年からただちにGHG排出削減を開始する場合、2020年においては1990年比−22~−27%、2030年においては1990年比−54~−66%となる。一方、現行の政府公約に従って2020年以降にGHG排出削減を開始する場合、2030年のGHG排出削減量はより大きいものになる。

 本研究では、現行の日本政府のGHG排出削減目標に基づく2020年から2050年までの年間平均GHG排出削減量は、CPEの下で2014年から即時にGHG排出削減行動を取る場合に必要な年間平均GHG排出削減量にほぼ等しいことも明らかにした。
 
 以上の結果は、日本がカーボン・バジェットおよび一般的な公平性基準を考慮するのであれば、排出削減を先延ばしせずに2020年目標を現行のものより野心的なものにして累積GHG排出量を押さえ、2020年からの年間平均GHG削減量をより現実的なレベルに抑えることが好ましいことを示唆する。

 一方、GHG排出削減の先延ばしは、GHG排出の固定化(ロック・イン)を招き、将来の選択肢を限定する。現在、日本において建設が計画されている新規火力発電所(11.4GW)がすべて石炭火力発電となると仮定すると、40年間の稼働年数の間に排出するGHG総量は2.7 Gt-CO2eに上り、これは日本に残されたカーボン・バジェットの12~14%を占める。

 また、仮に2014年8月時点で運転再開の申請が行われている13発電所の原子炉19基すべてが再稼働した場合、運転期間40年、設備利用率70%を想定すると、回避される総CO2排出量は試算されたカーボン・バジェットの7~8%程度になる。また、2030年時点での19基の再稼働によるCO2排出回避量は、日本の1990年CO2排出量の約5%となる。

Remarks: Page Information:
26 pages