Commentary
Topics: Region/Country: Language:
Japanese

暮らしの中の熱帯その5:「持続可能な」パーム油生産実現の課題

In グリーン・パワー 2019年5月号 Series:
Author: 
2019-05

パーム油は、西アフリカ原産のアブラヤシの実を搾った油脂から作られる。日本で消費される植物油のうち菜種油についで2番目に多く消費され、国民一人当たり年に4~5リットル消費している(WWF 2015)。食用油、マーガリン・ショートニング、スナック菓子、化粧品、洗剤など幅広い用途に使用されている。また、ここ数年ではアブラヤシの種子からパーム核油を取り出した後の残ざん渣さであるパーム核殻が輸入され、国内のバイオマス発電で使用されるようになっている(滝沢 2015等)。よって、パーム油はその生産過程で生じる副産物も含めて、私たちにとって非常に身近な存在といえる。しかし、日本ではパーム油を使用する商品の原材料名には「植物油脂」と記載されるので、普段パーム油を消費しているという実感をもつのが難しく、一般消費者の関心はまだまだ低いようである。パーム油の主な生産国はインドネシアとマレーシアで、両国ではアブラヤシ農園の急拡大によって、生物多様性の豊かな熱帯林が消失し、泥炭湿地では開発に伴う乾燥化と火災による大量の温室効果ガス排出が引き起こされてきた。さらに森林とともに生活を営んできた地域住民が、先祖代々利用してきた慣習地が農園企業によって収用されたり、農園では強制労働や児童労働が行われたりといった社会問題も報告されている(岡本 2002等)。一方で、負の側面だけでなく、地域住民の経済状況を改善するというポジティブな影響もある。そのため、背景となる文脈を注意深く読み解くことが必要である。私たち消費者は、現地における森林減少、生物多様性の破壊、地域住民の権利の侵害に関与していないパーム油を選ぶことが重要である。「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」によって認証されたパーム油を購入するなど、企業による「責任ある調達」や消費者による「持続可能な消費」を推進することが求められる(WWF 2015)。ただし、RSPO認証のパーム油を調達しても、RSPO認証を取得している農園の面積には限りがある。また、RSPOの基準では、原生林や保全価値の高い森林(HCVF)の保護についての規定はあるものの、それ以外の森林については伐採し農園開発を実施することが可能となっている。しかし、すでに伐採の入ったことのある天然二次林も、多くの野生動物にとっては非常に重要な生息地であり、こうした森林の保全が重要であることも指摘されている(川上2018、JATAN 2018)。本稿で紹介するインドネシアの東カリマンタン州は1980年代に一部の県でアブラヤシ農園開発が始まった後、特に2000年代後半から、比較的最近になってアブラヤシ農園が急拡大しており、私の調査地を含めて、今でも天然二次林が伐採されてアブラヤシ農園が造成されている。アブラヤシ農園企業と地域住民の土地の権利を巡る争いも数多く起きており、地元の新聞で報道されることも多い。私の問題意識は、このようなアブラヤシ農園の拡大はどこまで続くのかである。歯止めをかけることができるのか。それを東カリマンタン州の森林の状況、政策、制度、開発、地域住民の経済状況、土地の収用といった複数の点から考えてみたい。(本文より)

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26-29
ISBN/ISSN:
0389-0988