Non Peer-reviewed Article
Language:
Japanese

温暖化対策の切り札?それとも新たな環境破壊への道?−バイオ燃料の可能性と政策的課題−

In What's New from IGES? (IGES Newsletter) June 2007 Series: 2007-06

バイオ燃料は地球温暖化やエネルギー保障への有効な手立てと考えられることから、世界中で関心を集めている。今年1月に、欧州委員会は2020年までに輸送用燃料のバイオ燃料比率を10%以上に引き上げることを柱のひとつとした再生可能エネルギーロードマップを提案した。米国では、ブッシュ大統領が年頭教書演説において、今後10年間でバイオ燃料等への転換によりガソリン消費量を20%削減する計画を提案した。アジアでも、多くの国々がすでにバイオ燃料の増産計画に着手しており、同じ1月には、アセアン、日本、中国、韓国、オーストラリア、インド、及びニュージーランド16カ国首脳により、バイオ燃料の開発や生産利用強化を盛り込んだ「東アジアのエネルギー安全保障に関するセブ宣言」が採択されている。

一方で、「バイオ燃料ブーム」を懸念する声もある。トウモロコシ等のバイオ燃料作物は食料・飼料としても利用されているため、燃料用需要急増による価格上昇が、貧困層に打撃を与える可能性があるという指摘がある。さらに、燃料作物の生産拡大が、森林伐採、生物多様性の損失、土壌劣化、あるいは水質汚濁といった環境破壊を引き起こす恐れもある。事実、米国のバイオ燃料需要急増によるトウモロコシ価格急騰に対し、メキシコで抗議デモが起こったり、ブラジルやマレーシアで燃料作物生産に起因する森林破壊が報告されたりしている。

このような懸念に対して、いくつかの解決策も提案されている。技術的な解決策としては、食料・飼料と競合しない燃料作物の有効活用、それらの作物の耕作不適地での栽培、廃棄物の有効活用等が挙げられている。特に、建築廃材等のセルロースを利用したバイオエタノール生産への期待が大きい。制度的な解決策としては、途上国での持続可能なバイオ燃料生産を図るための、主要消費国である先進国からの技術的・資金的援助を促進するような協定も考えられている(http://www.biopact.com 参照)。しかしながら、これら解決策の多くは、まだ商業ベースで実践されておらず、アジア地域における適合性についても評価する必要があると考えられる。

バイオ燃料をめぐるこのような賛否両論を踏まえ、IGESでは環境持続可能性を損なうことなく貧困問題を解決するという観点から、アジア諸国を対象とした持続可能なバイオ燃料の生産・消費に関する政策研究を行うこととしている。本研究では、先進国での持続可能なバイオ燃料の消費を促進する政策によって得た収入を、開発途上国での持続可能な生産の促進に活用する統合的な国際費用分担スキームを検討する。その中心となるのは、環境負荷に応じて税率を定める燃料税のグリーン化及びグリーンな製法によるバイオ燃料への優遇関税措置である。これらの経済的手段によって、技術的・財政的支援等、途上国におけるバイオ燃料製造工程のグリーン化に必要となる財源を確保すると同時に、バイオ燃料の持続可能な生産・消費が促進されると期待される。この他、グリーンな製法によるバイオ燃料への環境認証・ラベリングシステム等の補完的な政策についても検討していく予定である。

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